少し長いあとがき「もう一つのタチバナとその横顔」

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    お久しぶりです。
    脚本・演出を担当した雨宮こと、平塚です。

    「三月のタチバナ、そこにある音。」へご来場頂きました皆様、
    楽しんで頂けましたでしょうか。
    (残念ながら、お会い出来なかった皆様、次の機会に是非お会いしましょう。)

    私達はと言えば、3月8日に本番を終え、
    それぞれが日常を取り戻すくらいの時間が経ちました。
    ※もっとも團野だけは、直ぐに別の本番があるので、
    今もって一息もついていないと思いますが。

    さて、物語には後書という補完が必要という方々に向けて、
    少しだけ今作を振り返る話をさせて頂ければと思います。

    はじまりは、昨年の年初め頃。
    酔った勢いで何人かに電話をしたのがきっかけです。
    「久しぶりになんかやんね?」
    雑な誘い文句ですが、毎回こんなものです。
    なので、返事をする方も割と簡単にやるといいます。
    この時点で、何をやろうかなど一つも考えていません。

    それから大きな進展もなく、4月。
    私の父が亡くなりました。

    勘の良い方はこの時点でピンときていると思いますが、
    タチバナの物語は、私がその時に喪主をやった時の経験が
    大きく影響したのは想像に難しくないところかと思います。
    もちろん根幹的な心理と幾つかの事実を残して、
    新たに物語として組み上げたのが今作ですが、
    お客様の中でも過去の経験を重ねる方が多かったようで、
    劇中の鈴・七緒・草平の台詞に共感の感想を多く頂きました。

    この辺りで簡単に役柄についても振り返りを。

    まずは、鈴。

    この話は、鈴の話が軸です。
    なので、鈴という役柄自体はどうやっても成立するように書きました。
    そして、最後の結論も鈴の役者である團野が腑に落ちないようなら、
    変えるつもりでした。
    その為、ギリギリまで最後のシーンを書きませんでした。
    特徴のあるセリフを前半あまり入れなかったせいで、
    大分、團野的には苦しそうでしたが、
    最終的には開き直って頑張ってくれました。
    大切なセリフはほとんど彼女が言っています。

    余談ですが、人が亡くなった後の体に触ったことはありますか?
    倫理的にもそう触るものではありませんが、
    その冷たさは、胸を突く痛みを伴い、魂の重さに気付かされます。
    最後のシーンで、彼女はこんな台詞をいい涙します。

    「いつも、色んな音がしてた。包丁の音とか、お父さんの音痴な唄、炒める音、
    お湯が沸いた音、お客さんの笑い声。うっさいなーとか思ってたんだけど、
    その音が無くなったのに気付いたら、酷く静かで、とても怖かった。
    胸がギュッとして、痛くて。これがずっと続くと思うと恐ろしかった。
    だから、お父さんの手、握ったの。冷たかった。
    昨日まで生きてたのに。もう暖かくならないんだなって。
    1人なんだなって思ったら、自分の心臓が潰れた音を聞いた気がしたの。
    あ、ダメだ。アタシ泣くわ。」

    この話を書いた理由が少し見えて貰えれば嬉しいです。
    ただの記録ですが、打ち上げで、酔って寝て、ニャーニャー言いながら
    独り言を繰り返し、色んな人に暴言を吐いて、言った後に覚えてないと
    いう事件を團野が起こしました。(笑)


    続いて、七緒。

    七緒は、ほとんど若菜に当て書きしてます。(笑)
    散々この役のせいで口が悪くなったと言われましたが、違います。
    若菜をイメージして書いたら、ああなりました。
    鈴だけでは、話が当然進まないので対比という位置づけです。
    七緒と草平の夫婦の感じが、良かったと言われることが多いのですが、
    その辺りは、元々付き合いも長い友人同士というところもあって、
    距離感を上手く出せたのだと思います。
    通夜の夜、外の雨を眺めて夫婦だけで話すシーンは、
    印象的なシーンとして心に残って頂けたようです。
    個人的には今回の七緒か、「夏日」の梓がハマり役なような気がします。
    ビール一杯で直ぐ寝るのは本当にやめて頂きたいと思うので、
    もう少し酒に強くなって欲しい今日この頃。


     ※前説のフリして、芝居は始まっていました!
      引っかかった人も多かったみたいです!
      してやったり。

    そして、草平。

    イメージは話の分かる親戚のおじさん。
    この役は、この話の中の傍観者。
    定食屋というリアリティを出すために、
    料理を作ったりしましたが、基本的には聞き役。
    話しても語り口は軽く、最後少し締める。
    でも、結論は何も出さなくて、最後に少しだけ背中を押す。

    草平 鈴ちゃんのやる定食屋、いいと思うよ。
    鈴 どうして?
    草平 悲しくても、嬉しくても、腹は減るじゃない。君に似合ってる。
    鈴 ありがとう。

    そう言ってあげるためだけに居ました。
    ちなみに、この後、暗転して行き話は終わりますが、
    この後の会話は全部アドリブで話してます。
    超適当です。
    最終日終演後、残ってたお客さんにオムレツ作ってあげたり、
    野菜炒め作ったり、カレーふるまったりしたのは楽しかったので、
    そういうのまたやってもいいような。


     ※ガチで作ってます!

    扱った題材が重めでしたので、
    とにかく軽やかな空気を混ぜ込んで
    早すぎず遅すぎずのテンポを作るため、
    ヤスとアン、それから優子というキャラクターが生まれました。

    特にアンは人気が高く「ちょっとこのキャラは卑怯だよ」と
    笑い交じりに言われると嬉しくなりますね。

    そんなアンのモデルは、何処かの飯屋にいたフィリピン人っぽい店員さん。
    とにかく絶妙な毒舌と単語のチョイスが頭に残っていて、
    そこから広げて、福満さんの声で最終的に固めた感じです。
    このアンという人が、国というアイデンティティーから外れ、
    彷徨ってしまう寂しさが伝わればいいと思っています。
    一言で寂しさと書きましたが、故郷へ簡単に戻れない人と戻れる人とでは、
    寂しさの種類が違います。
    前者でしか伝えられない寂しさが誰かに響けばいいと考えています。
    稽古で團野・若菜に抱き着く練習の時、
    「いい匂いがする…」と言って、抱きついたまま匂いを嗅ぎ続けていたのを
    妙に覚えています(笑)。
     
      ※問題のシーン(笑)


    ヤスは飯田橋のスタバでプロット練っている時に、
    私の後ろに座った名言を言いたがる大学生がモデルです。

    それが妙に面白くて、決め台詞を言うように名言をいうわけです。
    言う度に、私が爆笑するから、最後には不審な顔で見られましたが。
    その人がやたらと「〜ッス!」というのをそのまま使っています。
    断言しますが、ヤスの方がイイヤツです。
    馬鹿だけどいい奴。いい奴だけど馬鹿。
    演じた上松君は、打ち上げでジャッキーに似てると言われ、
    チェンと呼ばれていました。
    稽古で乳首をつねられ過ぎて「ジンジンする…」と悲しそうな顔をしていました。
    あまりに悲しい顔だったので、そのまま台詞にしてしまいました。
    役柄通り、ムードメーカーとして頑張ってくれました。

    優子は元々2人のキャラクターを考えていたのを1人にまとめた役です。

    プロットの段階では、2人必要じゃないか?と考えていましたが、
    書いてみたら1人にまとめた方が、尺的にも丁度いいんじゃない?と思うようになり、
    まとめてみたら、狙った時間で収まって自分でもビックリ。
    お陰で一番難産な役柄で、長ゼリ言わせた挙句に空気読まないというキャラが
    出来上がりました。
    で、水柿にセリフ言わせてみたら、毒気が思ったよりも出なくて、
    ウンウン唸って書きすすめたら、これはこれで面白い?と思うようになって、
    結果、水柿の持つマイルドさがブレンドされた形になりました。
    ある日、脚本を書くために遅れて稽古場に着いたら、
    プロレスラーの武藤のモノマネしてて何事かと思いましたが、
    面白いからヤレと言ってみたのは、良い思い出です。

     ※コレです

    ジョジョ立ちは、羽瀬に教わってたのも妙に面白かった。

    スタッフには、初期から付き合いがある島幸も・8sseこと羽瀬文野が脇固め、
    当日のスタッフも古くからのブレスメンバーが手伝ってくれたり、
    福満さん、上松君の友人が手伝ってくれたりと色々な人達に支えられて、
    一つの舞台を無事終幕することが出来ました。


    舞台としてのタチバナは終わりましたが、
    作中語られたように49日後、海へ散骨へ皆で行きます。
    その様子は、皆さんのお手元にあるチラシに収められています。
    流された後の海を日が暮れるまで眺めた後、ご飯を皆で食べたことでしょう。


    そして、鈴はタチバナ食堂を切り盛りし、アンはその横にてお店を手伝っています。
    草平はランチを手伝い、七緒はたまに家に顔を出しては
    優子とクダをまいています。
    優子は新しい絵本を書いているでしょう。
    ヤスはやっぱり鈴にアプローチをかけていますが、上手くいきません。
    それでも懲りずに通っているのは間違いありません。
    他の常連もお店に顔を出し始め、徐々に軌道に乗ることでしょう。

    当分、北区の商店街にあるタチバナ食堂は
    近隣の憩いの場として続きそうです。

    きっと、この食堂で何か起こる時は…
    劇場で皆さんとお会いするときでしょう。



    「三月のタチバナ、そこにある音。」

    これにて、おしまい。

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